滝山と天璋院

昨日の北京オリンピックの閉会式の前にあった
NHK大河ドラマ「篤姫」の感想です。
8月24日、今回の第34話のタイトルは「公家と武家」。
和宮降嫁に伴う大奥の人間模様を描いていました。
大御台所・天璋院(篤姫)と、御台所となる和宮の対立です。

いろいろな見方はあるでしょうが、
私は、今回のポイントは、稲森いずみさんが演じる大奥筆頭御年寄・滝山の存在だと思いました。

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大奥筆頭御年寄・滝山
(稲森いずみ)

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素顔の稲森いずみさん
1972年3月19日生まれ 鹿児島市出身

稲森いずみさんは、1994年『上を向いて歩こう!』で女優デビュー。2005年、大河ドラマ『義経』で大河ドラマに初出演。美しい常盤御前を披露し絶賛されました。2007年1月2日、テレビ東京系の新春ワイド時代劇 『忠臣蔵 瑤泉院の陰謀』で、浅野内匠頭の室・阿久利(瑤泉院)を主演。魅力炸裂の演技に陶酔しました。今回の滝山役で一層幅が広くなった演技と美貌に魅了されています。

以下、ジョーク!
 「稲森さん、僕と結婚して下さい!」
 「どうして、あなたなんかと?」
 「お国のためです。」
 「はい、わかりました。」

稲森いずみさんの名言です。
 人生に勝ちも負けもない。
 自分が一生懸命考えて選んだ道を歩んでいれば、それでいい。
 もっとみんな元気を出して、自分を愛してほしい。

                        (稲森いずみ)

滝山は、徳川家定、家茂、慶喜の3代にわたり、1000人を超える大奥女中の筆頭御年寄
(大奥総取締役)を務めました。老中など幕府の閣僚よりも強い権力もあったともいわれています。
井伊直弼の大老就任にも力を振るったと言われ、
当初は、天璋院(篤姫)とは激しく対立していました。

 女中とは、徳川政権下では、現代語のような家政婦さんとかお手伝いさんという意味ではなく、女性官僚のことであり、奥女中とは、幕府の女性官僚のことでした。御年寄とは、大奥女中の位の中の第二位に当たり、奥向の万事を差配する大奥随一の権力者で、表向の老中に匹敵する役職でした。老女(ろうじょ)とか局(つぼね)と呼称される事もあります。老女といっても、現代語でいうお婆さんというような意味ではなく、上級幹部といった意味の役職名です。大奥の最高位は、上臈御年寄(じょうろう おとしより)といって、奥女中の階級の中では最上位に位置し、儀式・典礼を統括していました。京都の公家出身者が多かったようです。
 また、男性の場合の年寄・老中というのは、現代語でいう老人とか高齢者のことではなく、幕府や藩の重役のことをいいます。大奥で、御年寄・老女が年齢のことではなく、大奥の最高権力者を意味しているように、年寄・老中も、現代の一般的な日本語の意味とは違い、役職を表す言葉です。老中とは、国政全体を総括する徳川幕府の役職で、将軍に次ぐ職位で常置の最高職です。幕府の中でも最高幹部で諸事万端差配します。大名時代の徳川家の年寄に由来し、寛永ごろに老中の名称が定着しました。諸藩では家老のことを老中と称する場合もあります。なお、大老とは、老いぼれ爺ちゃん!というようなことではなく、将軍の補佐役で臨時に老中の上に置かれた最高職のことです。年寄とは、現代語にいう年をとった人のことではなく、家臣団のうち最高の地位の役職のことを意味し、室町時代に生まれた言葉です。また、若年寄とは、若くして頭の禿げた人とか白髪の生えた人のことを言うのではなく、若い年寄(若い老中)という意味で老中の補佐役のことをいいます。長官の下の次官とでもいいましょうか。
 ここで、「老」とは、現代語で言う年老いたということを意味するものではなく、「老」という文字には、元来、尊敬の念が込められていて、人間的に熟達したという意味を持っています。それは経験豊富で、徳を積んでいる人とか、家臣を束ねる人間性がある人のことをさしています。
 江戸幕府の将軍・大老・老中(年寄)・若年寄などの役職を、今の株式会社の組織に例えると、将軍は社長、大老は副社長、老中(年寄)は専務、若年寄は常務のような感じになるのでしょうか・・・

滝山は、まず、大奥筆頭御年寄(大奥総取締役)という自分の「職務(役割)」に忠実です。
天璋院(宮崎あおいさん)を上座に案内し、和宮様(堀北真希さん)を下座に案内する。
そして、武家方のお付の女中と公家方のお付の女中が、もめる。
滝山は、大御台所・天璋院に対して、
『武家には武家の"しきたり"がございます。
 しきたりはしきたり、悔しがる方がおかしゅうございます…。』
と、ハッキリとキッパリ、進言しました。
大奥の秩序をキッチリ守って頂きたいとの思いからでしょう。
立場を考えての芯の1本通った姿は立派なものでした。
滝山を演じる稲森いずみさんの演技にも凄みがありました。
稲森さんは、その美貌の中に涼しげな女の風情が漂い、
何とも素晴らしい存在感を放っています。
役柄とはいえピシャリと言い放つ稲森さんの迫力に魅了されました。
このまま怜悧な滝山を演じ続けて欲しい。
天璋院付きの御年寄・重野(中嶋朋子さん)の優しさとはまた違った味わいでした。


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天璋院付き御年寄の重野
(中嶋朋子さん)

中嶋朋子さんは、劇団ひまわり出身。和宮降嫁、薩摩藩の幕政介入など、天璋院と辛苦をともにした天璋院付き御年寄の重野を演じています。中嶋さんは、8歳だった1981年から2002年までの22年の長きにわたり、フジテレビ系で放送された国民的ドラマ『北の国から』に主人公の娘・蛍役で出演。鮮烈なイメージで一躍有名になった子役出身の女優さんです。独特の感性を持ち、実力派女優として高い評価を得、その味わい深い演技で根強いファンを持ちます。子どもの頃から『北の国から』で培った自然体でエコロジカルなライフスタイルにも幅広い支持があり、北海道洞爺湖サミットで記念上映も行った映画『KIZUKI』では、主人公の母親役で出演されており、ご自身の仕事を通して地球環境を守るためのアプローチをされています。1994年TBSの『適齢期』にレギュラー出演、1995年テレビ東京の『クリスマスキス~イヴに逢いましょう』に水野しおり役で出演、TOKYO FMの『中嶋朋子 ふんわりの時間』、TBSのラジオ番組『ドライビングポップス 中嶋朋子のちょっと浪漫色』などに出演。近年では、ジャズ、民族音楽、オーケストラとのコラボレートで古典の朗読劇に取り組むほか、映像作家としても活動されています。

もう一つは、その後の天璋院から和宮に対する詫び。
『無礼のお詫びに参りました
 一辺の邪念のないことをご理解いただきたいと。
 しかしながら、
 いかなる素性があろうと和宮様が徳川家の人間となるのは確か。
 そうでなければ家中が乱れまする。
 宮様も、相当な覚悟で来られたと。
 私も同じ身にございました。
 おなごが覚悟を決めたからには、
 ココからは一本道を歩んでゆくのみにございます。
 とにもかくにも、これからはこの私が姑として御指南つかまつりまする。』
詫びながらも、毅然とした態度で嫁した者への心得を言い聞かせる天璋院。
さすがの言葉である。

更にもう一つは、天璋院が老中・安藤信正(白井晃さん)を叱咤する場面。
天璋院は、将軍・家茂が直筆の請文を帝(天皇)に差し出したことを知り、安藤信正を呼び出します。
公卿・岩倉具視(片岡鶴太郎さん)が強行に迫ったことを聞き、
『家茂様が帝に請文を? 岩倉の豪腕に屈したというのか。
 幕府はそれしきのことも拒めぬのか。そちらのやることはいつもそうじゃ。
 政(まつりごと)を預かり、国を動かす者としての気骨はないのか!
 意地は!誇りは!信念は!!』
と怒ります。そして、
『その点、井伊大老は立派であった。
 やり方はともあれ、こうと断じる気概とそれを貫く力があった。
 そちらは己が腑抜けであると知り、それを天に向かって恥じるがよい!!』
宮崎あおいが腹の底から出す声に、迫力が出ていました。

滝山の素晴らしいコントロールと天璋院の見事な決断でした。

後日談ですが、第35話の「疑惑の懐剣」での出来事。
和宮は家茂を拒み、懐剣(護身用の刀)を忍ばせて寝所に持ち込んでいるという疑惑が持ち上がります。
天璋院の詰問に無言をつらぬく和宮。
しびれを切らした天璋院は、力ずくで疑惑を調べようと和宮につかみかかります。
ところが、それは刀ではなく鏡でした。一軒落着。
滝山は、この事件を『私の不行き届き』 と天璋院に謝ります。
天璋院は、『そなたのおかげで 皆が安心して暮らせてる』 と言います。
滝山は、『私は自分のすべき事をしてるだけです。
できますれば、天璋院様のおそばにいて、この大奥で骨をうずめたいです』 と。
天璋院は滝山の言葉を嬉しく思い、『嬉しい事を・・私も安心してはめをはずせる』 と喜びます。
滝山『それはいけません!』
と言いながら、2人は 『たまには一献やりますか』 と親密になっていきます。

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天璋院(篤姫)
(宮崎あおい)

宮崎あおいさんは、4歳から子役として映画・テレビドラマ・CMに出演。2006年のNHK連続テレビ小説『純情きらり』で昭和の激動期を生きた桜子役を好演。平均視聴率19.6%というヒット作となりました。同世代の女優の中でも抜きん出た演技力を持つと定評があります。大河ドラマ『篤姫』のヒロインである13代将軍家定の正室で、幕末を強く生きた女性・篤姫(天璋院)を演じ、好評を博しています。最近のNHK大河ドラマの中でもトップクラスの演技だと思います。


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和宮
(堀北真希)

堀北真希さんは、公武合体で14代将軍徳川家茂の正室となるもう一人のヒロイン皇女和宮(静寛院宮)を演じています。時代劇初出演といいます。堀北真希さんは、2005年に公開された大ヒット映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で星野六子(むつこ)役を好演し、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。『三丁目の夕日』のときの活発な六子役とガラリと変わって、無表情の和宮役を好演していますね。『三丁目の夕日』のときとは、まるで別人みたい! 和宮役の評価がすこぶる良い。今回の和宮役で更に脚光を浴びる女優さんであることはほぼ間違いないでしょう。

 ついでながら、将軍の正室のことを、「御台所(みだいどころ)」とか「御台様(みだいさま)」といいますが、大奥あるいは大名家の奥方が、自ら台所に出向いて炊事作業をしたことはありませんでした。御台所は、宮中の「清涼殿(せいりょうでん):平安中期頃からの天皇の日常生活の場」の一角にあった「御台盤所(みだいばんどころ)」の略称です。御(み)は、敬意を表す接頭辞です。台盤所とは、清涼殿の一室であり女房(女官)の詰め所でした。そこで、台盤が置かれ食品などが用意されました。台盤とは公家や宮中の調度品の一種で、食器や食品を置く台(テーブル)の事をいいます。また、貴族の屋敷では食物を調理する所を台盤所と呼び、現在の台所(キッチン)の語源となっています。この台盤所が後に公家の妻の尊称となり、やがて縮めて「御台所」となり、後に将軍の正室の尊称となったと言われています。中世から江戸時代までは、家庭の主婦のことを「御台所」と称する風習もあったとか。


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